[PDF] 2016年04月 『抗癌剤の催吐性リスク分類と制吐療法について』
本試験では、現在の標準的な制吐療法(セロトニン受容体拮抗薬、ニューロキニン1受容体拮抗薬、ステロイドの3剤を併用)と、オランザピン5mgを上乗せする併用療法を比較するため、それぞれのグループに患者さんを無作為に分け、また患者さんも医師・薬剤師・看護師もどちらのグループか分からないようプラセボ(偽薬)を用いて比較しました。このような試験を、プラセボ対照二重盲検ランダム化第Ⅲ相比較試験と呼び、どちらがよいか分かっていない治療法を比べるのに最も科学的な良い方法です(図1)。
制吐薬の予防投与を十分行っても悪心・嘔吐が発現・継続します。 ☆予測性悪心 ..
2) 渡部智貴,半田智子,加藤裕久.日本国内の臨床試験に基づく抗がん剤の催吐性リスク分類.癌と化療.2015; 42: 335-41.
国立がん研究センターは2019年12月12日、化学療法による悪心(吐き気)・嘔吐(吐くこと)を抑える新たな制吐療法の有用性を、医師・薬剤師主導の第3相ランダム化比較試験J-FORCE試験で明らかにしたと発表しました。静岡がんセンターと国立がん研究センター中央病院を中心とした全国30施設の研究グループによるものです。
[PDF] デキサメタゾン製剤の制吐薬としての開発に関する要望については
1) 佐伯俊昭.制吐薬適正使用ガイドラインに関するアンケート調査.癌と化療.2015; 42: 305-11.
比較は、オランザピンを併用したグループ(オランザピン群)と併用しないグループ(プラセボ群)それぞれについて、急性期と遅発期と全期間(急性期+遅発期)における3つの指標で評価し(表1)、一番調べたいこと(主要評価項目)は研究グループが最も成績を改善したいと考えている遅発期の嘔吐完全抑制(CR)割合としました。
デキサメタゾン製剤の制吐薬としての開発に関する要望については、
そこで日本では、抗がん剤治療による悪心・嘔吐に対するオランザピン5mgの効果を検証した二つの予備研究が行われました。一つは静岡がんセンターが中心に行った標準制吐療法に対するオランザピン5mgの上乗せ効果を検証した第2相試験で、オランザピン5mgの上乗せにより制吐効果が高まることが示されました。もう一つは国立がん研究センター中央病院薬剤部が中心に行ったランダム化第2相比較試験で、海外の標準用量であるオランザピン10mgに対して5mgでも同等の効果が得られるかを検証し、5mgは10mgと同等の効果が得られ、かつ、10mgよりも副作用の眠気が軽いことがわかりました。これらの試験は第2相試験ですが、シスプラチンに対して標準制吐療法にオランザピン5mgを上乗せした効果を検証したのは世界で初めての試験であり、これらの結果を踏まえ、本研究を計画いたしました。
また、悪心・嘔吐の改善効果に加え、オランザピンの副作用である眠気が日中にも残っていないか、逆に副作用の眠気により良く眠れているかどうか、そして食欲低下に差があるかどうか(オランザピンは食欲増進効果がある)について、患者さんに症状日誌を記録していただきました。
[PDF] パロノセトロンおよびデキサメタゾンの 制吐療法を受
本研究に用いたのは、従来の抗精神病薬に特徴的な副作用が非常に少ない新しいタイプ(非定型抗精神病薬)のオランザピンという薬です。オランザピンの制吐効果を抗がん剤による悪心・嘔吐に対して活かす研究が米国を中心に複数行われ、その有効性は明らかとなっています。しかし、10mgという高用量を用いており、眠気やふらつきといった副作用が強く安全に使用できる十分な根拠に乏しいため、日本や欧州では普及に至っていませんでした。
J-FORCE試験は、全国30施設でシスプラチンを含む化学療法を初めて開始した、肺がん、食道がん、子宮がんなどの患者さん710人を対象として行われたです。現在の標準的な制吐療法「セロトニン受容体拮抗薬とニューロキニン1受容体拮抗薬、ステロイドの3剤併用」に非定型型抗精神病薬オランザピン5mgを上乗せする併用用法を、プラセボの上乗せと比較しました。評価は、急性期、遅発期、全期間の3つの指標における、遅発期の嘔吐完全抑制割合で行われました。また、悪心・嘔吐の改善効果に加え、オランザピンのである眠気が日中に残っていないか、逆に副作用の眠気でよく眠れているか、オランザピンの食欲増進効果により食欲低下に差があるかなど、患者さんに症状日誌を記録してもらいました。
申請者は、この点を明らかにすべく、高度催吐性リスクの抗がん剤に対する制吐療法と
また,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン (12 mg に減量→ 参照)とアプレピタントによる3 剤併用療法も,高度リスクの抗がん薬による急性嘔吐と同様に遅発性嘔吐に対しても推奨されている。
2剤併用(5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン)への追加・併用は推奨なし
ランダム化比較試験やプールドアナリシスの結果では,デキサメタゾン4~8 mg 経口投与(2~3 日目)とNK1受容体拮抗薬であるアプレピタント80 mg 経口投与(2~3 日目)の併用がデキサメタゾン単独より有用であった。この2 剤併用は,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用に比べても有意に遅発性嘔吐を抑制しており(21% vs.36%,p<0.001),ASCO ガイドライン2017,MASCC/ESMO ガイドライン2016 で推奨されている。
参考:日本癌治療学会制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂
ASCO ガイドライン2017 によれば,遅発性嘔吐は,程度としては軽度なものが多いが,急性嘔吐の対処が不十分なときに起こりやすいとされる。治療としては副腎皮質ステロイド(経口デキサメタゾン)が推奨されており,メトクロプラミドや5-HT3受容体拮抗薬とも併用される。しかし,デキサメタゾンに加え5-HT3受容体拮抗薬を併用しても制吐効果の増強は得られない。さらに,急性嘔吐を認めた場合にはこれら2 剤を併用しても効果は不十分であるとされているため,抗がん薬の催吐性リスクや患者の状態に応じていずれか一方の使用にとどめるべきと思われる。
新たな制吐剤の登場にもかかわらず、悪心嘔吐はがん治療を受ける小児 ..
遅発性嘔吐は,抗がん薬投与後24 時間以降に発現するもの,と定義されており,そのコントロールは,患者のQOL 維持,さらに精神的安定や治療に対する意欲の向上のためにも必要不可欠である。薬剤の催吐性リスクを適正に評価し,エビデンスに基づいた制吐薬の適切な使用を検討する必要がある。
制吐剤,ステロイド,血液凝固関連薬,気管支拡張薬,内分泌関連薬,呼吸中枢刺激 ..
薬剤の催吐性リスク分類は単剤での評価が基本であるが,同一薬剤であっても投与量,投与法によって異なり,さらに近年ではいずれの悪性腫瘍においても多剤併用療法が主流となっているため,催吐性リスクが過小評価とならないよう細心の注意を払うべきである。この点に関して,アントラサイクリンとシクロホスファミドの併用療法について,それぞれ単剤(シクロホスファミド≦1,500 mg/m2)では中等度リスクに分類されるが,NCCN ガイドライン2017 では高度リスク群として明記され,MASCC/ESMO ガイドライン2016 およびASCO ガイドライン2017 においても嘔吐頻度が高いことが示されている〔→参照〕。さらに,抗がん薬を複数日にわたって施行するレジメンの場合,薬剤の投与順序に応じて急性嘔吐と遅発性嘔吐が重複する場合もあり,より綿密な治療計画が望まれる。その一例としてリンパ腫におけるESHAP 療法では,1 日目から4 日目は中等度リスクとして対処し,高用量シタラビンが投与される5 日目以降は高度リスクとして対処する。
前コースで十分な CINV コントロールが得られた場合でも、制吐剤による有害事象等を除
なおホスアプレピタントの海外第III相ランダム化比較試験として,中等度リスクの制吐薬治療における5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用に対するホスアプレピタントの上乗せ効果が報告されている。
吐、悪心では無くなり制吐剤の進歩が伺える。 制吐斉1には上記 2剤の他にステロイド (特にデキサメタゾン)が使用されることが
基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mg を静注(8~12 mg を経口)の2 剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾンを減量(静注: 3.3~4.95 mg,経口: 4~6 mg)する(→参照)。また,わが国では400 例を超えるオキサリプラチン投与患者に対する第III相ランダム化比較試験が行われ,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下において,アプレピタント/ホスアプレピタント群がコントロール群より全治療期間,特に遅発期の悪心・嘔吐の制御に優れることが示された。
大鵬薬品 NK1受容体拮抗型制吐剤・ホスネツピタントを国内申請
NCCN ガイドライン 2015 では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンをパロノセトロンとデキサメタゾンと3 剤併用で用いるオプションが示された。さらに同2017では,新たにアプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加えるレジメンも提示された。これらは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験や,アプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加える有用性が示された第III相ランダム化比較試験の結果を受けている。ASCO ガイドライン2017 でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された。オランザピンはわが国でも複数の臨床試験が行われた。オランザピンは公知申請により2017 年6 月から,他の制吐薬との併用において成人では5㎎ を1 日1 回経口投与(患者状態により最大1日10㎎ まで増量可能),最大6 日間を目安として先発品と一部の後発品で保険下にて使用が可能となった。本邦における推奨用量,使用方法については未だ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる。慎重投与すべき患者としては,糖尿病患者ならびに高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者であり,使用に際しては副作用の傾眠や血糖上昇に十分注意する。高齢者への投与も慎重に行うべきである。作用点が重複するドパミンD2 受容体拮抗薬ドンペリドン,メトクロプラミド,ハロペリドール,リスペリドンなどとの併用は勧められず,また,睡眠薬との併用には注意を要する。投与量に関してはランダム化第Ⅱ 相試験ではあるが,高度リスク抗がん薬投与に対し3剤併用に加えたオランザピン5 ㎎ と10 ㎎では遅発期の悪心・嘔吐の制御において同等であったとの報告もある。
[PDF] オランザピンによる テーマ 3剤併用制吐療法の有効性 ..
NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン9.9 mg 静注(12 mg 経口)の3 剤併用が推奨される。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2 剤併用に比べ,アプレピタントを加えた3 剤を併用することで制吐作用の著しい改善が示されている~。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬(→ 参照)は,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,薬剤間またその投与経路によって効果に大きな差はなく,用量や投与回数の影響を受けないことから,抗がん薬投与開始前に必要量を単回投与とする。第2 世代5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンは,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,急性嘔吐の予防効果は他薬剤と同等であるが,遅発性嘔吐の予防において優れている(→ 参照)。デキサメタゾンの用量(→ 参照)については,第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬との2 剤併用では13.2~16.5 mg を静注(16~20 mg を経口)とされてきたが,アプレピタントとの併用では,アプレピタントがCYP3A4 を阻害することによりデキサメタゾンの濃度-時間曲線下面積(area under the concentration-time curve; AUC)が増加するため,3 剤併用では9.9 mg 静注(12 mg 経口)に減量する。ただし,副腎皮質ステロイドが抗がん薬として投与されるCHOP 療法などではレジメン内のステロイドは減量してはならない。アプレピタントの投与期間は3 日間が推奨される。ホスアプレピタントはアプレピタントの水溶性を向上させたリン酸化プロドラッグであり,静脈内投与後に体内の脱リン酸化酵素によって速やかに活性本体であるアプレピタントに変換される。ホスアプレピタントはオンダンセトロン,デキサメタゾンとの3 剤併用でアプレピタントとの同等性が示されており,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下での抗がん薬投与30 分前,150 mg の単回使用が推奨される。ただし,副作用として注射部位痛/発赤/血栓性静脈炎の頻度が高いことに留意すべきである。
デキサメタゾン(DEX))と制吐剤2剤併用群(PALO+DEX)の制吐効果を検討する
小児を対象とした適切なランダム化試験として特定できたのはわずか34件であり、その中では、26通りの薬剤の使用法が検討された。一般的に悪心は嘔吐より不快感の強い症状であるが、臨床試験は悪心よりも嘔吐を報告する傾向があった。 最適な薬剤、最も有効な用量、経口(飲み薬)と経静脈(注射)のどちらがより適した投与方法か、という点について確固たる結論は得られなかった。5‐HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロンといった『トロン系』)が既存の薬剤より有効であり、またデキサメタゾンを追加することでさらに効果は上がると考えられる。 今後の研究では、患者やその家族が重要と捉える問題を考慮し、悪心嘔吐を評価する確立した手法を用いるべきであり、また、使える情報を最大限に利用するためにレビューを行う上で、さらに新しい方法を試みるべきである。
[PDF] 副腎皮質ホルモン剤 デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液
第1 世代の各5-HT3受容体拮抗薬の制吐効果に差はないとされているが,わが国で行われた高度リスクの抗がん薬投与に対する,第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群とグラニセトロンとデキサメタゾンの併用群の制吐効果を検討した第III相ランダム化比較試験において,パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群が有意に遅発性嘔吐を抑制したことが示されている(参照)。また,高度リスクの抗がん薬投与に対するパロノセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群と,グラニセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群の制吐効果の比較を行った第III相ランダム化比較試験(TRIPLE 試験)が報告され,主要評価項目ではないがパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示された。