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日本では、販売されていないメラトニンですが、睡眠や生体リズムへの効果は科学確認されています。メラトニンは体内のメラトニン受容体という部位に対して働きます。メラトニン受容体には、メラトニン1, 2, 3 (MT1, 2, 3)受容体の3種類があります。MT1と、機能は良くわかっていませんがMT3(文献1)がメラトニンの抗腫瘍作用に関係している可能性があるとも考えられています。また、MT3はメラトニンだけが作用するわけではないという報告もあります(文献2)。
本論文は、健常な男性 12 名を対象に、模擬夜勤後の明るい(Bright:>3000 lx ..
メラトニンは脳の松果体から分泌される「今が夜であること」を体が認識する働きを持つホルモンであり、下記のように、日没後かつ充分に暗い時点から分泌が開始され、真夜中に分泌のピークを迎え、朝明るくなると共に分泌が終了する性質があります。ピーク濃度は年齢と昼間に浴びた光の量によって異なってきますが、小児期の100pg/mLがおおむねピークです。
しかし、精液量、性ホルモン、PSQIの総合スコアの間には、有意な相関は見られませんでした。
交絡因子の調整後でも、睡眠の質の悪い男性(PSQIが高値の男性)は、以下のパラメータが悪化していました:
10月7日:メラトニンの進化(9月25日号Cell誌掲載論文)
メラトニンは、脳の松果体という部位から夜間(午後9時ころから午前9時ころの間に午前2−3時頃をピークとして)分泌される神経ホルモンで、ヒトでは睡眠を安定させたり、生体時計の調整を行ったりする作用をもっています。日本では販売が許可されていせんが、アメリカなどでは、サプリメントとして販売されており、スーパーマーケットのサプリメントコーナーにもおいてあります。以前は、動物から抽出したものものが多かったようですが、最近は植物からの抽出したものも多く出回っています。冒頭の写真の容器のラベルの右下にもVEGETARIANとの記載があります。
今回、東京大学大学院理学系研究科の岡本紘幸大学院生、西澤知宏准教授(研究当時)、濡木理教授らの研究グループは、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法を用いて、リガンドが結合し活性化したメラトニン受容体MT1およびGiタンパク質三量体で構成されるシグナル伝達複合体の立体構造を解明しました(図1)。これにより、メラトニン受容体が活性化するメカニズムを明らかにしました。さらに、東北大学の井上飛鳥准教授の開発したGiタンパク質三量体の活性化検出法を用いたメラトニン受容体の変異体解析により、先行研究では明らかとなっていなかった受容体の活性化に重要なアミノ酸残基を新しく特定することに成功しました(図2)。
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近年、X線結晶構造解析によって、睡眠障害の治療薬が結合した状態でメラトニン受容体の立体構造が報告され、薬剤の認識機構などが解明されました。しかし一連の構造解析では、受容体の安定化のために様々な変異が導入された、生理活性を示さないような変異体が用いられていました。そのため、受容体を活性化状態にする作動薬が結合しているにも関わらず不活性化型の構造を示しており、生理的な状況を反映していない状態でした。以上から、メラトニン受容体がリガンドによって活性化するメカニズムは不明なままであり、治療薬の開発に求められる詳細な作動メカニズムは解明されていない状況にありました。
しかし、精液量と性ホルモンには有意な変化を認めませんでした。
結論として、 睡眠の質の低下は性ホルモンに影響を与えていませんでしたが、精液の質の低下と関連していました。
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科学的背景「睡眠覚醒リズムとADHD特性に関連がある可能性」
睡眠覚醒リズムにはメラトニンというホルモンが関与していることが知られていましたが、メラトニンは光を浴びると分泌が抑制されるために、これまでにメラトニンの分泌に関与する遺伝的な要因については明らかになっていませんでした。台湾国立大学の研究者らは、尿中のメラトニン代謝物が比較的安定しており、これをクレアチニン値で補正することで、早朝のメラトニン代謝物を測定することで夜間のメラトニン分泌を高い精度で推測できることを見出し、これを台湾の健常者を対象にして測定し、メラトニンの分泌に影響を与える遺伝子の変化を明らかにしました。本研究ではこの遺伝子解析の結果を利用して、浜松母と子の出生コホート参加者876名を対象にして研究を行いました。
MT1には、1,2両方の働きがあるようです。また、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、MT1はレム睡眠に対する、MT2はノンレム睡眠に対する影響があるようです(文献3:図も)。これらの作用を利用して、メラトニンを不眠症治療、睡眠の改善にもちいることが行われます。
<博士論文> 霊長類を用いたメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの睡眠誘発作用に関する薬効薬理研究 ; 日本語 · 2012 · 九州大学
メラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine)は脊椎動物の松果体や眼球で暗期に合成されることから、環境の明暗情報を伝達するホルモンと考えられている。メラトニンは、哺乳類においては繁殖期の決定や概日周期の同調に重要な役割を果たしているが、魚類における知見は乏しい。そこで本研究は、魚類におけるメラトニンの動態、合成・代謝機構、さらにメラトニン受容体による情報伝達系までを総合的に明らかにすることを目的としている。概要は以下の通りである。
筆頭論文がJournal of Pineal Researchに掲載されました
男性不妊症外来では、規則正しい生活と睡眠を十分にとって健康的な生活を心がけるようにお話ししています。ご自身の健康が、元気な赤ちゃんと幸せな家庭につながるからです。このアドバイスが正しいことが確認できた研究です。
PSQIは自分で解答するアンケートで、睡眠時間以外に、就寝の時間、睡眠に入るまでの時間、起床時間、睡眠に困難を感じた場合のその理由とその頻度(入眠も問題、中途あるいは早期覚醒、就寝中の排泄、息苦しさ、咳やいびき、寒さ、暑さ、悪い夢、痛み)、睡眠の質の自己評価、睡眠薬の服用、日中の活動状況や意欲について幅広い質問項目があります。
これを日常診療で聴くのは大変なので、当クリニックでは採用していませんが、ピッツバーグ睡眠質問票の日本語版が掲載されているサイトがあります。興味のある方は是非試してみてください。ちなみに筆者はPSQI総合スコアが5点でサイトでの評価ではギリギリセーフとの結果でしたが、この研究では睡眠の質が悪い方に入ってしまっています。
睡眠がみだれると、サーカディアンリズムに影響が出ると言われています。サーカディアンリズムはメラトニンで調整されていますが、睡眠の乱れがメラトニン分泌にも影響します。メラトニンは、性ホルモンの分泌にも影響し、精子形成の悪化を招くという機序があります。ただし、本研究ではPSQIで評価した睡眠の質とホルモンの関連は分かりませんでした。一方で、この研究では睡眠の質のわるい男性はBMIが高く、運動量が少なく、喫煙や飲酒の頻度が高いことから、精液所見悪化の機序は生活習慣因子とも関連する可能性があります。ただし、BMI、喫煙、飲酒、身体活動、性交頻度で補正しても、睡眠の質と精液所見の関連性は保たれたままでした。また、睡眠の質の悪い男性は、就寝時間が遅く、睡眠時間も短い傾向(6.9時間vs 7.7時間)がありました。他の報告(「睡眠と精液検査①」で紹介)では、睡眠が長すぎても良くないとの結果もありますが、今回ご紹介した研究ではそのような結果は出ていませんでした。やはり睡眠時間だけでなく睡眠の質も含めて総合的に評価することも必要なようです。
十分で良好な睡眠はあなたの一日の生活を順調に過ごすための第一歩です。精液所見にも影響しますので、ご自身の睡眠を一度見直してみてはいかがでしょうか?
※ 論文の内容に関するお問い合わせは、当センターでは受け付けておりません ..
背景としては、睡眠時間が精液の質に及ぼす影響については、多くの疫学研究で報告されています。しかしながら、睡眠の質と精液検査のパラメータ(精子数、精子運動率など)や性ホルモン(下垂体ホルモンやテストステロンなど)との関連はまだ不明です。
この研究は、2017年10月から2019年7月にかけて、中国浙江省の生殖医療センターを受診した症例970名を対象に横断的研究を実施したものです。参加者全員が精液サンプルを提出し、身体検査を受け、人口統計学的指標(年齢、教育、職業)、生活習慣(性行為の回数、喫煙、アルコールやカフェインの摂取、運動、サウナや熱い入浴の習慣)、睡眠習慣についてアンケートで回答してもらいました。睡眠は、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index、PSQI)という睡眠の質もみる質問票(アンケート)を用いて評価しました。点数(スコア)をつけて、PSQIスコアが高いほど睡眠の質が悪いことを意味します。まず、睡眠の質によって患者さんを2つの群に分けました(PQSI<5が睡眠良好、PSQI≧5が睡眠不良)。次に,各群の精子検査のパラメータ(精液量、精子運動率、精子前進運動率、精子濃度、総精子数、正常精子形態率)および性ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、エストロゲン、テストステロン、プロラクチン)を測定しました。最後に、多変量線形回帰分析およびスピアマン相関係数を用いて、睡眠の質(離散変数または二項変数)と精液検査のパラメータ、性ホルモンとの関係を検討しました。
結果は次のようになっていました。PSQIの点数といくつかの精液パラメータとの間に負の相関が認められました(PSQIが高いと精液所見のパラメータが悪化する):
2024年現在、当社の製品は、世界中で9,000件以上の論文に引用されています。
ラメルテオンは、体内時計を調整するメラトニン受容体(MT2)に対してメラトニンの16.9倍の作用をもたらすほか、ラメルテオンが体内で代謝されて生じるM-IIという物質もメラトニンの2/3程度の作用をもたらします(IC50)。問題は、体内で自然に分泌されるメラトニン自体は血液内に上記のとおり、どれだけ多くても夜間ピークで100pg/mL(0.1ng/mL)という程度でしか存在しないのに対し、ラメルテオンを1錠(8mg)投与すると、M-IIは54ng/mL(54000pg/mL)と、生理的なピーク濃度の少なくとも500倍程度以上の血中濃度を示します。さらにはM-IIは半減期(体から半分抜けていく時間)が2時間程度であるため、仮に就寝前の0時に服用した場合、12時間経過したあとも1/64が体内に残存していることになります(2^6=64)。これは、真昼の12時であってもメラトニンの夜間ピーク濃度の10倍程度以上の血中物質濃度、そして約6倍以上の受容体活性が残存することとなります。受容体活性(IC50)を反映したモデル図を以下に示します。
・薬理学的効果と生理学的効果の見極めなど,関連論文等の情報を常に集めて研究.
治療前には全ての症例(100%)で朝の覚醒困難があり、学校や職場への遅刻/欠席が生じていましたが、治療後、60.9%の症例は学校や職場への遅刻が消失し、「著効」と判断されました。残りの26.1%の症例は部分奏効と判断され、13.0%の症例では明らかな改善が見られず「無効」と判断されました。また、治療前には69.6%の症例で睡眠酩酊(朝起きたときあるいは起こされた時にその記憶が欠損したり、混乱したり、人格が変容して粗暴的になったりする)を認めましたが、87.5%の症例でこれが消失しました。他に、治療前に見られた起床時の頭痛、嘔気等も、治療後は改善が見られました。治療の副作用として服用直後の眠気・倦怠感が21.7%の症例に認められましたが、数日内に、あるいは、再診時の投与量減量にて消失しました。
論文掲載雑誌:「Journal of Pineal Research」(2019年2月号)
メラトニンは主に脳の松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンです。トリプトファンという物質から、セロトニンを経てメラトニンが合成されます。
セロトニンとは、神経伝達物質の一種で、気分の安定や幸福感をもたらす役割があります。また、昼間の覚醒状態を維持するのに重要です。このセロトニンが夜になるとメラトニンに変換され、睡眠を促進します。
サーカディアンリズムと記憶 -メラトニン投与による長期増強抑制効果-. 専修大学人文科学研究所人文科学年報
適切な睡眠と回復は、アスリートのパフォーマンス向上に不可欠。アスリートの多くが睡眠サプリメントを使用していることが報告されている。メラトニンもその一つだが、メラトニンには睡眠改善に加え、抗酸化作用により筋肉を保護するように働く可能性がある。
5.3 と 4 の結果から,低温ストレスに対する窒素とメラトニンの混合効果を評価した.この結
キンギョの血中メラトニン濃度は6月、9月に高く、12月、3月に低い明瞭な季節変化を示した。このため環境条件を変えて調べたところ、血中濃度は水温の高低にかかわらず暗期に高い日周リズムを示したものの、低水温下では暗期の濃度は大きく低下することが判明した。この結果、血中メラトニン濃度は日長と水温の双方に影響を受けるものと結論された。
※本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業,組織,団体
以上,本研究においては,魚類におけるメラトニン合成の制御機構,メラトニン受容体による情報伝達機構,メラトニンの代謝系,ならびにメラトニン投与法などについて総合的に検討した。これらの結果は,魚類においてもメラトニンが,季節繁殖などの年周リズムや,遊泳活動,摂餌活動などの日周リズムの調節に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。本研究で明らかになった結果は,魚類におけるメラトニンの生理作用をさらに詳しく解明するために重要な基礎的知見となるものと思われる。