【感染症内科医監修】ペニシリン系抗生物質の一覧解説<早見表つき


欧州臨床微生物・感染症学会(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases; ESCMID)の会員を対象に、血流感染症でIDSAガイドラインがどの程度遵守されているのか調べた報告があります[14]。この報告では、専門家の1/4が治療後10日目以降で経口抗菌薬への変更を行うと回答しており、少数ですが治療開始後48-72時間以降での変更を考慮するという回答もあります。各国で事情は様々でしょうが、現場では意外に早期から経口抗菌薬にスイッチされている可能性があります。


まずは一部の代表的な医薬品をご紹介します。 抗生物質の種類, 系統名, 医薬品名

この構造的特徴により、アンピシリンは広範囲の細菌に対して抗菌活性を示すことができるのです。

ムレインモノマーのペプチド鎖のD-Ala-D-Ala部分がβラクタム環に類似しているため、ペプチドグリカン合成の際にPBPがβラクタム系抗生物質を標的と勘違いしてしまう。

ビクシリン (Meiji Seikaファルマ), ビクシリンカプセル250mg, 21円/カプセル ..

アンピシリンは半合成ペニシリンの一種で、その分子構造はペニシリン骨格にアミノ基が付加された形態を持っており、この独特の構造が広範囲の抗菌活性を可能にしています。

これによって、トランスペプチダーゼ活性に必要なPBPのセリン残基の水酸基とβラクタム系抗生物質が安定なエステル結合(共有結合=不可逆)を形成し、トランスペプチダーゼ活性を阻害するため、ペプチドグリカンの合成がなされず、細胞壁の合成が止まる。

[PDF] セフェムアレルギーと βラクタム系抗菌薬の使用(交差反応)

Βラクタム系抗生物質は親水性が高く、腎臓から未変化体で排泄される割合が高い薬剤であり、親水性が高い(マクロライドとテトラサイクリン系は逆に親油性が高い)ために脂質二重層である細胞膜は通過しにくい。

アンピシリン水和物の有効成分は化学名アンピシリンであり、この物質はペニシリン系抗生物質に分類される化合物で、その特性から多くの感染症治療に用いられています。

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グラム陽性菌は細胞内圧が高く、分厚い細胞壁を壊すと溶菌されるためβラクタム系抗生物質が効きやすい。グラム陰性菌は細胞内圧が低く、細胞壁も薄い、そして外膜を通過するためにポーリンを通過する必要があるため、βラクタム系抗生物質の効果は限定的となる。

アンピシリン水和物は広域スペクトル抗生物質として知られており、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して効果を発揮し、多様な細菌感染症の治療に貢献しています。


中等症又は重症の場合 アモキシシリン(AMPC)高用量内服 5~7 日間

<Key Points>◎ベンジルペニシリン、アンピシリン、アモキシシリンは侵襲性肺炎球菌感染症、溶連菌性咽頭炎、腸球菌感染症、梅毒、歯科治療などのキードラッグである。◎ベンジルペニシリン、アンピシリンの主な代替薬はセフトリアキソン、セフォタキシム、テトラサイクリン系抗菌薬、グリコペプチド系抗菌薬である。◎アモキシシリンの主な代替薬はセファレキシン、マクロライド系抗菌薬、クリンダマイシンである。

[PDF] 【4】Q&A 腎機能に応じた抗菌薬の投与量について

また、耐性化してβラクタマーゼ(ペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼ)というβラクタム系抗生物質のβラクタム環を加水分解して開環させて抗菌作用を失活させてしまう酵素を産生する菌も存在し、そうした菌にはβラクタマーゼを阻害する効果のある薬(クラブラン酸、タゾバクタム、スルバクタム)を一緒に投与するか、薬自体にβラクタマーゼ阻害作用を持たせるかをしなければ効果がなくなってしまう。

商品名ビクシリンとしても知られるアンピシリン水和物は、呼吸器感染症を ..

(バンコマイシン・テイコプラニン)抗生物質はD-Ala-D-Ala部位に水素結合してこの部分を覆ってしまい、架橋構造を作るのを阻害する。

アモキシシリン水和物(アモリン・サワシリン) – 呼吸器治療薬

また、未解決の課題として、腸内細菌科GNRによる感染症を治療する際の経口抗菌薬として、極めてbioavailabilityが高いフルオロキノロンやST合剤を使用するのか、βラクタム系抗菌薬でもよいのか、という問題があります[11]。感染症医の中でも意見が分かれるようです。先ほどのJAMA Internal Medicineの論文[10]でも、経口抗菌薬の種類別に差を示すことはできていません。βラクタム系抗菌薬の中にbioavailabilityの異なる薬剤が混在することも、混乱を招く原因になっています。フルオロキノロン・ST合剤と、βラクタム系抗菌薬の間で予後に差がないとする研究もあります。しかし、現状でこの問題に判断を下すには、十分に事実が集積していません[12]。βラクタム系抗菌薬を使用するのであれば、セファレキシン、アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸などのbioavailabilityの高い薬剤に限定するというのが一つの方法でしょう。経口抗菌薬を含めた適切な治療期間も、まだ検討が必要です。

アモキシシリンならびにアモキシシリン/クラブラン酸の不足に関する提言(2023.8

肺炎球菌は髄膜炎,敗血症・菌血症などの侵襲性感染症,および副鼻腔炎,中耳炎,肺炎などの気道感染症の原因となる細菌である。市中における気道感染症の原因微生物はほかにもあるが,細菌感染の関与を疑った場合には,肺炎球菌の関与を想定した治療が必要である。髄膜炎の場合,ペニシリンに対する感受性の判定は,最小発育阻止濃度のカットオフ値が異なることに注意が必要である。

[PDF] Ⅰ.肺炎の重症度分類 Ⅱ.細菌性肺炎と非定型性肺炎の鑑別

この系の抗生物質はβラクタム環、つまり四角形の環構造(4員環)を持つという共通の特徴があります。βラクタム系抗生物質はこの4員環の右に接する構造によっていくつかに分類できる。

ペニシリン系注射薬(ペニシリン G,ビクシリン S,ビクシリン、ドイル、ペントシリン、.

アンピシリン水和物は様々な感染症の治療に効果を発揮し、その広範な抗菌スペクトルを活かして多岐にわたる臨床応用が可能となっています。

[PDF] 歯周病患者における抗菌薬適正使用のガイドライン 2020

青カビから分離された天然抗生物質です。スペクトラムは狭域ですが、レンサ球菌・髄膜炎菌への強力な活性を持つ「切れ味のよい」抗菌薬と言えるでしょう。半減期が短いため、4時間ごとの点滴もしくは24時間持続点滴で投与(腎機能正常の場合)します。

①アモキシシリン*,オーグメンチン(アモキシシリン+クラブラン酸カリウム ..

アンピシリン水和物とは、細菌感染症の治療に用いられる抗生物質の一種です。

・ビクシリン(ABPC) 6 週間+ゲンタシン(GM) 4~6 週間

抗生物質の構造が細胞壁を形成するペプチドグリカンのD-アラニル-D-アラニン末端と類似しているため、ペプチドを伸長させるのに必要なペニシリン結合タンパク(PBP)のランスペプチターゼいう酵素が、D-アラニル-D-アラニン末端でなく抗生物質のほうに結合してしまうことによる。

ビクシリン (アンピシリン水和物) MeijiSeika [処方薬]の解説、注意

レンサ球菌:溶血レンサ球菌による皮膚軟部組織感染症(壊死性筋膜炎であればクリンダマイシンの併用を検討)や緑色レンサ球菌による感染性心内膜炎の第一選択
髄膜炎菌:髄膜炎菌性髄膜炎の第一選択
感受性のある肺炎球菌での第一選択:最近ではペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin-resistant )が増えている
梅毒・レプトスピラなどのスピロヘータ属の第一選択
クロストリジウム属(など)や口腔内嫌気性菌の大部分(など)
その他さまざまな微生物に活性がある:ジフテリア()・炭疽菌 ()・放線菌のアクチノミセス()など
× 黄色ブドウ球菌・大腸菌はペニシリナーゼを産生するため耐性であることが多い
× 横隔膜下の嫌気性菌には無効

[]内は一般名で、それぞれに該当する内容が書かれています。 処方目的 解説

早期の経口抗菌薬への変更が検討された過去の研究においても、bioavailabilityに優れた薬剤を用いた研究が多いです。よって、まずは対象となる感染症が、これらの薬剤でカバーできるのか考えましょう。bioavailabilityの良好な抗微生物薬の薬物動態については、一般的に健常人での研究に基づくものが多いですが、罹患した状態の患者でも同等の値を示していた、とする報告もあります[6-9]。

アモキシシリン)1回15~30mg/kg(アモキシシリンとして)1日3回(毎食 ..

主な副作用は、ペニシリンショック(ペニシリン代謝物が生体内蛋白に結合しアレルゲンとなると考えられている。)

アモキシシリン · アモペニキシン · アモリン · アルベカシン · アレンフラール ..

静注抗菌薬を経口抗菌薬に変更する際の問題の一つが、経口抗菌薬では薬剤ごとにbioavailabilityが異なることです。また、静注抗菌薬なら感染を悪化・再燃させにくいという強い思い込みがあるために、経口抗菌薬に変更する際に心理的な抵抗が生じることがあります。実際には、bioavailabilityに優れた経口抗菌薬であれば、静注抗菌薬同等の効果が期待できることが多いです。表3[5]にbioavailabilityを90%以上と60-90%の2パターンに分けて、抗微生物薬の投与例を記載します。