標準治療として、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピシンの 3 剤併
非結核性抗酸菌が原因です。非結核性抗酸菌にはたくさんの種類があり、ヒトに病原性があるとされているものだけでも10種類以上があります。日本で最も多いのはMAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約80%を占め、次いでマイコバクテリウム ・キャンサシーが約10%を占め、その他が約10%を占めています。
非結核性抗酸菌症 | 複十字病院 公式サイト(東京都 清瀬市)
肺NTM症は,確定診断した場合でも,約1~2割は自然軽快することがあるため,必ずしも診断後直ちに全例に治療を開始せず,注意深い経過観察を行うこともある。一方,喀痰抗酸菌塗抹陽性例や空洞を有する例では,治療開始が推奨される1)3)。さらに,治療の忍容性や基礎疾患,画像所見の経時的推移,同定菌種などを総合的に考慮して,治療開始や治療内容を決定する。
すべての薬剤の体重あたりの投与量と投与方法を記載しているのが改正点である。CAMについてのみ若干あいまいなのは,同薬が肺MAC症治療の中心であり,できる限りたくさんの量を1回投与するのが理想であるが,高齢者では副作用の発現頻度が高まるため,このような表現となった次第である。体重40kg以上であれば800mg分2で,40kg未満の場合600mg分1で投与するのが一般的な意見である。しかし年齢や体重,また副作用のため,さらに減量や分割投与を余儀なくされることもある。ストレプトマイシン(SM)またはカナマイシン(KM)は,比較的重症例に初期2~3ヵ月間併用するのが一般的な使用法と考えられる。しかし中等症以上であればできるだけ併用すべきとの意見もある。
副作用対策は結核以上に大切であるため,「改訂見解」でも詳述している。第一に味覚障害や胃腸障害による食欲低下が問題となる。特に70歳以上の高齢者で頻度が高いため,表1 2)の薬剤を一気に投与するのではなく,1週間ごとに1薬剤ずつ加えていくなどの工夫が大切である。高齢でやせている患者の場合,1薬剤の投与量も少なめから開始するなどのさらなる配慮が必要となる。その他血液毒性,皮疹,EBによる視力障害が特に重要な副作用である。減感作療法の適応も含めて「改訂見解」の副作用の項を参照願いたい。RBTの使用法と副作用対策については特に詳しく述べている。RBTはRFPより副作用の頻度が高いので,RFPが使用できない例に投与するのが一般的である。RBT 300mgがRFP 600mgに相当する。またCAMとの併用で血中濃度が上昇し副作用(特にぶどう膜炎)の頻度が高まると報告されている。したがって初期投与量は150mgとし,6ヵ月以上副作用がない場合のみ300mgまで増量する。
治療開始時期について「改訂見解」では明言していない。現在の化学療法の効果が不十分であること,副作用の頻度が特に高齢者で高いこと,肺MAC症の経過が一律ではなく無治療でも長期間悪化しない例が存在していることを考えると,診断基準を満たした症例すべてを治療することは現実的ではない。高齢で症状が乏しく経過が緩慢な例は,無治療で経過観察してよいというのが一般的な見解である。しかし,どのような例でもできるだけ早期に治療を開始したほうがよいとの意見もあり,また保険適応のある正式な薬剤がある現状では,十分説明し本人の同意を得たうえで無治療・経過観察としなければならない。その点も踏まえて,外科適応を含めた治療方針について専門医に一度相談しておくことが望ましいと「改訂見解」には記載されている。
治療開始時期との関連で,今回の改訂では肺MAC症の病型についても言及している。近年顕著に増加しているのは,中葉・舌区を中心に気管支拡張と小結節影が多発する結節・気管支拡張型である。この病型は,中年以降の特に基礎疾患のない女性に多い。一方,結核と同様に肺尖や上肺野中心に空洞が多発する線維空洞型がある。この病型は喫煙男性に多く,結節・気管支拡張型と比べて予後不良である5)。したがって線維空洞型の場合,診断後速やかに最大限の化学療法を開始し,できる限り外科治療も加えなければならない。
現在ブロスミックNTMTMを用いることで,「改訂見解」で推奨した薬剤の検出菌株に対する最少発育阻止濃度(MIC)を測定することが可能である。しかし,CAM以外の薬剤のMICが肺MAC症の治療効果を予測できるというデータは得られていない。CAM以外の薬剤の単剤投与では,生体内での効果は乏しいというのが従来からの見解である。EB単剤のMICは治療効果が考えられないほど高いことが多い。しかし実際の臨床でCAMと併用した場合,一定の効果があることは以前より知られている。CAMのMICのみ臨床的には有用となるが,初回治療例のCAM耐性はほとんどないので,再治療例もしくは治療経過の悪い例のみ測定すればよい。MIC 4μg/mL以下が感受性,32以上が耐性で,8と16は判定保留とする5)。CAM耐性の場合CAMは中止とする。判定保留の場合CAMは継続し,定期的にCAMの薬剤感受性検査を繰り返す。CAM耐性は,CAM単剤またはCAM+フルオロキノロン薬投与例に多いとされており6),このような治療をしてはならない。治療するならできる限り「改訂見解」で示した多剤併用療法を実施する。
化学療法の期間も「改訂見解」には明示していない。米国のガイドライン5)では喀痰培養陰性化後1年,英国のガイドライン7)では総計2年となっているが,エビデンスがあるわけではない。肺MAC症の経過や予後は,個々の症例で大きく異なっており,もともと一定の治療期間を決めにくいことは,治療開始の基準を作成しにくいことと同様である。化学療法の効果が認められた症例では,米国ガイドラインより長く治療したほうが予後はよいとの報告がわが国でなされている8)。
[PDF] マクロライド系抗生物質製剤 日本薬局方 クラリスロマイシン錠
クラリス(一般名:クラリスロマイシン)とはマクロライド系の抗生物質です。従来のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを改良してできたものであり、ニューマクロライドともいわれています。抗生物質の代表といえるのはβラクタム薬(ペニシリン系、セフェム系等)ですが、マクロライド系も肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌、インフルエンザ菌や百日咳菌など一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、非定型菌のマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなど多くの細菌に対して効力を発揮します。いろいろな細菌に有効なので、呼吸器系の領域を中心に多くの診療科で処方されています。多くは咽頭炎・肺炎・中耳炎などに対する処方です。消化器領域ではピロリ菌の除菌薬としても数多く処方されています。皮膚科領域においては、感染を伴う、表在性/深在性皮膚感染症、リンパ管/節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍などの疾患に対して選択されることがあります。
近年、非結核性抗酸菌症は増加傾向であり、年から年までの年間で約倍に増加したと報告されており、患者数は菌が陽性となった結核患者さんよりも多いとされています図。
非結核性抗酸菌(NTM)とは? 抗酸菌のうち、結核とらい菌を除く細菌。 Non ..
MAC症の治療は, リファンピシン(RFP), エタンブトール(EB), クラリスロマイシン(CAM) の3薬剤による多剤併用療法が標準治療であり, 必要に応じてさらにストレプトマイシン(SM) またはカナマイシン(KM) の併用を行う()6)。CAMは化学療法の中心となる薬剤であり, CAM耐性MAC症の治療は非常に困難となる。CAM単剤投与は数カ月以内にCAM耐性MAC菌が出現することが報告されていることから, 症状が軽微であっても, CAM単剤投与は避けるべきとされる。 治療期間は, 少なくとも排菌陰性化後1年間は継続するべきとされているが, 治療終了後の再燃・再感染は頻繁に認められており, 最適化学療法期間の設定は今後の重大な課題である。
呼吸器内科で診療を行う病気は、腫瘍、感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、間質性肺炎など多岐にわたります。
なかでも、WHOの2020年度全世界での死亡原因予想で上位となることが予測されるCOPD・肺癌・肺炎(結核含む)など頻度の高い疾患や、地域特性の高い悪性胸膜中皮腫について最新のエビデンスに基づいた治療を行うことができるよう取り組んでいます。
先端分野の臨床と研究の実践、医師をはじめとする医療人の臨床教育、受診される患者さんにとって安心できる呼吸器領域の医療の提供を心がけています。
[DOC] 抗酸菌症(結核および非結核性抗酸菌症)の治療薬と副作用
このQ&Aは2013年10月26日開かれた第1回肺非結核性抗酸菌症公開市民講座に患者さん代表で話されたIさんの依頼で出来ました。Iさんは, 最近肺MAC症のことはインターネットにも比較的沢山見られるようになりましたが、 断片的であったり、 信頼できるものかどうか不明な情報も数多いと不満を感じており、沢山のQuestionを寄せられました。
もちろん判らないことがまだたくさんある病気なので断言出来ないことが色々ありますし、これからも内容を更新していきたいと思っています。
病気総論(全体像をおおまかにつかむ)
クラリスに最も特徴的なのは、一般的な抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効であることです。マイコプラズマは肺炎を引き起こすことで有名ですが、皮膚に感染して皮膚に治りにくい傷を作る原因になることもあります。またクラミジアは性感染症の原因となり、外陰部に痛みや痒みを引き起こします。マイコバクテリウムは皮膚の下で膿を作り、ジクジクとした傷を引き起こす原因菌です。これらはどれも稀な病気で抗生物質が効きにくいのが特徴ですが、クラリスは比較的よく効きます。またクラリスが改良される前の薬であるエリスロマイシンには胃酸によって効力が落ちるという弱点がありましたが、クラリスは胃酸の影響をほとんど受けません。体内にしっかりと吸収されるため、1日2回の服用で十分な治療効果が得られます。その他の特徴として、クラリスはアレルギーを起こしにくいとされています。βラクタム系の抗生物質に対してアレルギーがある人でも使用可能です。ただし他の薬と相互作用を起こしやすいので、飲み合わせには注意が必要です。
○リファンピシン(またはリファブチン)+エタンブトール+クラリスロマイシン(+ストレプトマイシンまたはカナマイシン)
●非結核性抗酸菌症になった場合の日常生活の注意点について
先にも述べたように通常ヒトからヒトには感染しないので、安心して下さい。先天的免疫不全の恐れのある新生児や重篤な病状の方との密接な接触は念のため避けて下さい。常日頃から住環境を清潔に整えることを心掛けてもらい、禁煙、規則正しい食事、十分な栄養や睡眠など良い免疫状態を保つ事が非常に大切です。日頃の生活では最大限の活動量を10とした場合7位の生活を心掛けてもらえれば良いかと思います。また非結核性抗酸菌症では軽症でも喀血、血痰が生じやすいのが特徴です。多くは少量で自然に軽快しますので、慌てずに主治医の指示に従うようにしてください。血痰の頻度や量が増えていれば、主治医と相談するようにしましょう。また内服薬での治療中の場合は他疾患の薬との飲み合わせで注意を要すこともありますので合わせて主治医と相談するようにしてください。治療をするにしても、経過観察するにしても、この病気と長くお付き合いしていこうというゆとりをもって過ごすことが肝要です。
非定型抗酸菌とは抗酸菌の中で結核菌群を除く培養可能な抗酸菌を一括した ..
非結核性抗酸菌とは、抗酸菌という細菌のグループのうち結核菌以外の抗酸菌を総称したもので、現在約種類程度が存在するとされています。非結核性抗酸菌による感染症を非結核性抗酸菌症といいますが、非結核性抗酸菌の中で、Mycobacterium aviumという菌とMycobacterium intracellulareという菌を合わせてMAC菌(ycobacterium vium omplexの頭文字からと命名と呼んでおり、非結核性抗酸菌症のうち程度が菌による感染症とされています。
クラリスロマイシン(CAM)を主薬とした抗結核薬との併用療法や、これらに抵抗.
臨床経過は3期に分けられる。
1)カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなる。
2)痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となる。これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート)、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出る(笛声:whoop)。この様な咳嗽発作がくり返すことをレプリーゼと呼ぶ。しばしば嘔吐を伴う。
発熱はないか、あっても微熱程度である。息を詰めて咳をするため、顔面の静脈圧が上昇し、顔面浮腫、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などが見られることもある。非発作時は無症状であるが、何らかの刺激が加わると発作が誘発される。また、夜間の発作が多い。年齢が小さいほど症状は非定型的であり、乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止と進展することがある。合併症としては肺炎の他、発症機序は不明であるが脳症も重要な問題となり、特に乳児で注意が必要である。1992~1994年の米国での調査によると、致命率は全年齢児で0.2%、6カ月未満児で0.6%とされている。
3)回復期(2, 3週~):激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなるが、その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出る。全経過約2~3カ月で回復する。
成人の百日咳では咳が長期にわたって持続するが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、やがて回復に向かう。軽症で診断が見のがされやすいが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要である。これらの点から、成人における百日咳の流行に今後注意していく必要がある。
また、アデノウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどの呼吸器感染症でも同様の発作性の咳嗽を示すことがあり、鑑別診断上注意が必要である。
臨床検査では、小児の場合には白血球数が数万/mm3に増加することもあり、分画ではリンパ球の異常増多がみられる。しかし、赤沈やCRPは正常範囲か軽度上昇程度である。
播種性非結核性抗酸菌 (NTM) 感染症 | 日和見疾患の診断・治療
グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染によるが、一部はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)も原因となる。感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染である。
百日咳の発症機序は未だ解明されていないが、百日咳菌の有する種々の生物活性物質の一部が、病原因子として発症に関与すると考えられている。病原因子と考えられるものとしては、繊維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(69KD外膜蛋白)、線毛(Fim2、Fim3)などの定着因子と、百日咳毒素(PT)、気管上皮細胞毒素、アデニル酸シクラーゼ、易熱性皮膚壊死毒素などの毒素がある。
【非結核性抗酸菌症】2023年度倉敷中央病院 第2回市民 ..
NTM症は, わが国の高齢化, 結核の低蔓延化に伴い, 今後も増加傾向にあると考えられる。NTM症発生動向の系時的な把握, 簡便で鋭敏な診断法の開発・改良, 最適な治療プロトコールの確立と耐性菌発生の予防に向けて, より一層の対応が必要であろう。
クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの 3 剤が使用されま.
代表的な治療薬はクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)とエタンブトールで、この2種類の薬にリファンピシンを加えて3種類の薬で治療します。このうちクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)は治療に重要な薬です。飲み薬だけでは治療の効果が不十分な場合などにはストレプトマイシンの注射剤(筋肉注射)、アミカシンの点滴注射や後述する吸入薬(アリケイス®)を使用する場合があります。リファンピシンのかわりにリファブチンを用いることもあります。
リファンピシン; エタンブトール; クラリスロマイシン; ストレプトマイシン
<はじめに>
当院では肺非結核性抗酸菌症で治療が必要な患者さんのうち
通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)を2回に分けて経口投与する。 · <非結核性抗酸菌症>
「改訂見解」2)そのものが日本結核病学会ホームページ(HP)の対策委員会報告からダウンロード可能なので,本文をぜひ熟読していただきたい。本稿では「改訂見解」をいくぶん噛み砕いて解説することとする。「2.肺MAC症に対する標準化学療法」が「改訂見解」の主要部分である。
表1 2)に肺MAC症化学療法の用量と用法を引用しておく。
肺MAC症は、結核と並ぶ抗酸菌である非結核性抗酸菌の7-8割を占めるMAC ..
年には非結核性抗酸菌症による死亡数は初めて結核による死亡者数を超え、その後その差はさらに広がっており(図2)、高齢化がすすむ日本において今後非結核性抗酸菌症による死亡者数のさらなる増加が予想されます。
非結核性抗酸菌症治療薬の薬物相互作用と用法用量設定に関する研究
肺MAC症を完全に治癒に導く薬物療法は、現在のところ確立していません。ただし、比較的ゆっくりと進行する病気であり、ときに自然軽快することもあるため、軽症の時には経過観察のみを行うこともあります。痰・咳・血痰といった症状がある場合や、画像検査で病変が広く進んでいく場合には治療を行います。クラリスロマイシン(CAM)、 エタンブトール(EB)、リファンピシン(RFP)の3種の抗菌薬内服による多剤併用療法が標準治療になります。薬物治療は、少なくとも2年~3年(菌が培養されなくなってから1年間)続ける必要があります。病勢の強い方には、初期にストレプトマイシン(SM)またはカナマイシン(KM)の点滴・注射の併用を行うことや、難治性の場合にはアミカシン(AMK)の吸入療法を追加することもあります。病変が肺の一部分にとどまっている場合には外科手術を、しつこい血痰や喀血が続く場合には止血目的でカテーテル治療を行うことがあります。