現在、アモキシシリン(AMPC)は、本邦で承認されている小児の最大投与
活用する上で注意が必要な点として、前半部分、すなわち「外来編」が急性気道感染症、急性下痢症という病態の括りでより具体的に語られているのに対して、「入院編」ではそうした病態の括りではなく、総論は概念的な部分を中心に、別冊では微生物を中心に語られていることが挙げられる。すなわち、例えば肺炎や尿路感染の診断、原因微生物、鑑別となる疾患、抗菌薬選択などについては詳しく書かれていない。ただ、この部分については、近年さまざまな書籍が発刊されており、それと組み合わせて使用することで感染症診療がスムーズに進むものと考える。将来的に手引きにもそうした記載を追加することも考えられるが、一方で分量がさらに多くなる懸念がある。
ペニシリン系経口抗菌薬(高用量が望ましい*) *例:アモキシシリン 1.5g~2g.
1) 乾正幸, 大和田進, 乾純和ほか. ラテックス免疫比濁法を用いた血清Helicobacter pylori抗体検出キットの判定保留域(陰性高値・陰性低値)の解析. 日本消化器病学会誌 2017:114:1968-1977. 【横断研究】
2) 権頭健太、高橋悠、山道信毅ほか. H. pylori診断におけるH.ピロリ-ラッテクス「生研」及びH.ピロリIgG「」の有用性の検討. 日本消化器がん検診学会雑誌 2017:55:547-553. 【横断研究】
3) 乾正幸, 大和田進, 乾純和ほか. ラテックス免疫比濁法を用いた血清Helicobacter pylori抗体検出キットの実地臨床における有用性の検討-EIA法およびCLEIA法キットとの比較解析-. 日本ヘリコバクター学会誌2017:19:33-42. 【横断研究】
一方、微生物検査技師や感染症診療に携わる機会の多い医師、薬剤師など、微生物についての知識が豊富な方にとっては、別冊を活用する機会が増えると思われる。ESBLやAmpCなど、よく遭遇する薬剤耐性微生物に対する抗微生物薬選択や、カルバペネム耐性のグラム陰性菌に対する抗菌薬選択およびその投与法などが現場では特に問題となるが、別冊の内容はこうした問題に対する答えを提供してくれる。使いやすさの点からはダイジェスト版があるとより活用しやすいが、今後発行が予定されているとのことであり期待したい。抗微生物薬選択の背景についてさらに深く知りたい場合には、別冊ならびに補遺の内容について精読いただくことをお勧めする。
リンの用量として,前版のガイドラインに準じて成人で 2.0 g としたのが ..
そのため、感染症診療についての知識や経験がより乏しい読者も想定されるが、そうした読者には、まず入院患者における抗微生物薬適正使用編の本編をよく読んでいただきたい。先述のように院内の勉強会でもぜひ活用していただきたい。実際の症例において、例えば「治療がうまくいっていないと感じた場合にどのように考えたらよいか」など診療で悩んだときに参照する「参考書」としての役割も果たしてくれると考える。実際、筆者が「感染症が苦手」と感じている医学生や初期研修医を指導する場合、本編を一緒に見ながら解説すると、理解がスムーズになっているように感じる。同様に、ASTのカンファレンスでも(特に、感染症医が常駐していない施設で)、カンファレンスの参加者に本編を読んでいただくことで、より質の高いAST活動につながることが期待できる。また、前項で触れたように、黄色ブドウ球菌やカンジダなど、血液培養から分離された場合にASTが介入し、バンドルアプローチを用いることで予後の改善が期待されるような微生物については、別冊の記載を読んで基本的事項を押さえておくことが非常に重要である。
現在国内で最もよく使用されるEIA法による測定キット「Eプレート栄研H.ピロリ抗体II」(Eプレート)の場合、感染診断のカットオフは10 U/mL以上とされています。しかし、陰性と判断されても抗体価が3 U/mL以上10 U/mL未満のカットオフに近い場合は「陰性高値」とされ、この場合20%弱の感染者が存在することが知られています。そのため、ガイドライン2016年版では、陰性高値者では他の検査で感染の有無を確認すべきであるとされています。このほど日本ヘリコバクター学会から新たに公表された「ピロリ菌血清抗体を加味した効果的な胃がん検診法と除菌を組み合わせた包括的胃がん予防のための推奨指針」1)においても、陰性高値者にはピロリ菌感染例と除菌後例が混在するので、適切なH. pylori感染診断を追加し、陽性の場合は除菌することが推奨されています。
*4 : スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸(いずれも高用量が望ましい。具体的な
市販の抗H. pylori抗体を用いた免疫染色ではH. pylori以外のHelicobacterも陽性となることが報告されています1-3)。H. pylori以外のHelicobacter属菌は、近年Non-H. pylori Helicobacters (NHPH)と呼ばれており、ヒト胃粘膜にもNHPHの感染がみられます4)。ヒト胃粘膜に感染がみられるNHPH は従来Helicobacter heilmannii-like organism (HHLO)と呼ばれてきたもので、H. suis, H. heilmannii, H. bizzozeronii,H. felis等が知られています4, 5)。HHLOの多くはH. suisです6)。HHLOが典型的な螺旋形態を示す場合はその形態がH. pyloriと異なっているためH. pyloriとの鑑別が可能です4)。螺旋形態を示したHHLOはH. pyloriよりも大型で螺旋が強く、胃粘膜上皮に接着することなく、胃粘膜上皮表面の粘液ゲル内や胃小窩内に観察されます。しかしながら、HHLOはしばしば壁細胞の細胞内分泌細管内に侵入することがあります。細胞内分泌細管内のHHLOや球状体構造を呈したHHLOは形態的にはH. pyloriとの鑑別が困難となります3)。H. felisを除き、ヒト胃粘膜からのHHLOの培養法は確立していないため、菌種の同定には胃生検組織を用いた、HHLOのウレアーゼ遺伝子解析が必要となります7)。
まずは抗生物質などの抗菌薬が影響を及ぼすことは明確です。各種PPIはH. pyloriに対して抗菌活性を有しており、ウレアーゼ活性に影響を及ぼします。また、一部の防御因子増強薬(エカベトナトリウムなど)は抗ウレアーゼ活性を示します。新しい酸分泌抑制薬P-CAB(ボノプラザン)には抗菌薬活性はないとされていますが、ウレアーゼ活性を阻害し尿素呼気試験に影響するとされています1)。除菌判定には従来のPPIと同様に注意が必要です。
○意外とアモキシシリンのほうが高い? ○1日総投与量が2000mgとIDSAガイドラインの2倍量で計算してい
解説: 予防投与として認可されている抗インフルエンザ薬はノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)であるオセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニラミビル(イナビル)とキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)である。全て保険適応外である。オセルタミビル、ザナミビルの一日あたりの予防投与量は治療量の半量で期間は治療量の倍である。ラニラビルは単回投与であり、投与量は10歳未満および10歳以上で治療量と同量であるが、10歳以上であれば2日間に分けることも可能である。バロキサビルは、10mg錠が予防内服投与適応外である。
ほかに、国内のガイドライン/ガイダンスとの違いとして、抗微生物薬の投与量について、添付文書上の投与量を大きく上回る投与量の推奨も見られる点が挙げられる。これらの投与量は欧米のガイドラインでの推奨にほぼ準拠したものであるが、抗微生物薬の投与量が欧米と比較して少量であることが問題視されてきた歴史を考えると、厚生労働省の文書で推奨される投与量として記載されている点は画期的に映る。
除菌療法でのCAMの用量については、ガイドラインに記載がありますように、200 mg ..
H. pylori除菌により7割程度の症例で胃過形成性ポリープが消失もしくは縮小することが報告されています1), 2)。よって多発例などでは治療の第一選択として除菌を行うよう勧められます。除菌後の経過観察で縮小傾向が見られないなど、切除が必要と思われる場合に内視鏡切除を考慮します。ただし、癌を否定出来ない場合3)や出血を伴うような症例では、先に内視鏡的切除術を行うことを考慮すべきです。その場合も、いずれかの時期に除菌治療を行う必要があります。
用量であれば有効性が期待されることがあります。 クラブラン酸/アモキシシリン(CVA/AMPC) アモキシシリン ..
推奨: 小児の市中肺炎に対して、細菌性肺炎が疑われる場合、臨床症状の改善、副作用の軽減、費用対効果を考慮し、アモキシシリン/アンピシリンを5日間投与することを推奨する。
小児の用法・用量については、添付文書では「アモキシシリン水和物として ..
本手引きは、学生・研修医などの初学者向けの教育や、既に臨床で活躍する医師の参考に資するのみならず、院内での多職種を対象とした勉強会などの教材としても活用できるものと思われる。例えば、「(1)-(ii)適切な培養の実施」は感染症を診断する基盤となる微生物検査の“キモ”の一つであり、ASの一環として診断プロセスの適切な運用を支援する診断支援(diagnostic stewardship;DS)につながる内容となっていて、微生物検査技師の方々にも深く関わる内容になっている。「(1)-(v)抗菌薬の選択の適正化」から「(2)-(ii)抗菌薬の経静脈投与と経口投与」にかけてはASにおいて重要な点がまとめられており、ASTに関わる医師や薬剤師、看護師、微生物検査技師にとって有用な内容となっている。
なお,1 回投与量が高用量で,単回で治療が完結するため服薬コンプライアンスが ..
これら本編の内容は、一言でまとめるのであれば「総論」である。すなわち、感染症診療に当たる上で、すべての医療者に共通認識として持っておいてほしい「お約束」が書かれている。適切な抗微生物薬を使用する上で、こうした「お約束」を理解しておくことは非常に重要である。例えば、感染症の重症度評価や治療効果判定のための指標とその解釈、微生物検査の適切な実施とその解釈などについては、抗微生物薬治療を行う上で欠かせない。本編に記載された内容は、こうした重要な部分が簡潔に分かりやすくまとめられており、感染症診療に関わる医療者にはぜひ一読いただきたいものになっている。
肺炎球菌(PRSP を含む)→ AMPC(高用量) ii ..
H. pylori 除菌後には GERD の発症や症状増悪の可能性が懸念されてきましたが、海外とわが国で微妙にアウトカムが異なります。海外ではいくつかのメタ解析がおこなわれていますが、一定のコンセンサスは得られていません。わが国では、除菌後に胃酸分泌が増加し「一過性に」酸逆流症状の出現や悪化、あるいは逆流性食道炎の増加が見られることが報告されています1)-3)。一方で消化性潰瘍患者に対して除菌しても、逆流性食道炎の発症は増加しないという報告4)や、十二指腸潰瘍を合併している逆流性食道炎の場合には、むしろ逆流性食道炎が改善するという報告5)や、十二指腸潰瘍合併例でなくても、1 年後には GERD 関連の QOLと酸逆流症状は改善するとの報告6)があり、背景にある病態によっては、除菌がGERDを抑制する場合もあります。除菌後のGERDを長期観察した場合もLos Angeles 分類の A,B の軽症者が大多数で、重症化することはほとんどない6), 7)と考えられます。以上から、除菌後GERDの発生増加は除菌治療の妨げにはならないと考えられます。
量が 40mg/kg/日である一方で、海外では幅広い疾患及び菌種に対してより高用量(最大量と
CAMはCYP3A4の阻害薬であり、同じ酵素やトランスポーターで代謝・輸送される薬物の動態に影響します1)。同酵素で代謝される薬物との相互作用に十分注意が必要です2)。エルゴタミンはCAMと併用禁忌です。エルゴタミンとの併用ではその血管収縮作用を増強させます2)。併用禁忌薬には、この他に、ピモジド、チカグレロル等、7剤あります。併用注意薬には、カルバマゼピン、テオフィリン、アトルバスタチンカルシウム水和物、シンバスタチン、ベンゾジアゼピン系薬、カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、ベラパミル等)、ワルファリンカリウム等があります。スタチンは、併用で血中濃度が上昇し、横紋筋融解症が生じることがあります。ワルファリンではINRの上昇、カルシウム拮抗薬では徐脈や低血圧のリスクがあります2)。ジゴキシンは、腸内細菌に影響し、不活化が抑制されたり、輸送阻害が生じ、血中濃度が上昇します3)。スルホニル尿素系血糖降下薬は、機序は明確ではないですが、CAMとの併用により血中濃度が上昇する可能性があります3)。これらを含め、併用注意薬は30剤以上あります。除菌対象患者さんが他の医薬品を服用中の場合では、添付文書で確認したり、薬剤師に相談することが必要です。
[PDF] 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン
我が国での使用量は0.1%L型アドレナリン0.1〜0.3ml/kgを生理的食塩水2mlに混じてネブライザー投与を行うのが一般的であり、体重別では0.01ml/kgを基準にしているところが多い。最大1.0ml/kgまで使用可能とする報告もあるが、添付文書では1回投与量は0.3ml/kg以内と記載されており、今後の検討が必要である。
[PDF] 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン, ドラフト版
1) Zullo A, Hassan C, Cristofari F, et al. Effects of H. pylori eradication on early stage gastric mucosa‒ associated lymphoid tissue lymphoma. Clin Gastroenterol Hepatol 2010;8:105‒110. 【メタ解析】
2) Nakamura S, Sugiyama T, Matsumoto T, et al. Long‒term clinical outcome of gastric MALT lym- phoma after eradication of Helicobacter pylori:a multicentre cohort follow‒up study of 420 patients in Japan. Gut 2012;61:507‒513.【コホート】
3) Inagaki H, Nakamura T, Li C, et al. Gastric MALT lymphomas are divided into three groups based on responsiveness to Helicobacter pylori eradication and detection of API2‒MALT1 fusion. Am J Surg Pathol 2004;28:1560‒1567.【コホート】
4) Nakagawa S, Shimoyama T, Nakamura M et al. The Resolution of Helicobacter suis-associated Gastric Lesions after Eradication Therapy. Intern Med 2017 Epub. 【ケースシリーズ】
5) Franchini M, Cruciani M, Mengoli C, et al. Effect of Helicobacter pylori eradication on platelet count in idiopathic thrombocytopenic purpura:a systematic review and meta‒analysis. J Antimicrob Chemother 2007;60:237‒246.【メタ解析】
6) Tsutsumi Y, Kanamori H, Yamato H, et al. Randomized study of Helicobacter pylori eradication therapy and proton pump inhibitor monotherapy for idiopathic thrombocytopenic purpura. Ann Hematol 2005;84:807‒811.【ランダム化】
モキシフロキサシン AMPC:アモキシシリン, AMPC/CVA:アモキシシリン/クラブラン酸 ..
さらに、近年の世界的な薬剤耐性の広がりに伴い、国外では新たな広域スペクトラムの抗微生物薬が開発・臨床使用され、国内でも徐々に製造販売承認を得て使用可能になってきている。こうした広域スペクトラム抗微生物薬は、薬剤耐性微生物に対する切り札として非常に重要であるが、無秩序に使用した場合、新たな薬剤耐性を生んで使用場面が限られてしまうという、過去歩んできた道をたどる可能性が非常に高い。そのため、こうした抗微生物薬の使用対象となる薬剤耐性微生物の特徴や診療におけるポイント、選択肢となる抗微生物薬についての指針は、臨床上の有用性が高く、希求されてきた。
[PDF] 亀田感染症ガイドライン 咽頭炎(version 2)
H. pylori の除菌療法におけるPPIやVonoprazanは除菌の補助薬です。従って、併存する胃潰瘍や慢性胃炎や逆流性食道炎に対してH2受容体拮抗薬を併用することは一次除菌療法においても二次除菌療法においても保険診療上問題ないと解釈できます。一次除菌療法においてはH. pyloriの除菌にH2受容体拮抗薬を併用することで除菌率が有意に向上することが報告されています1)。二次除菌療法での除菌率に対する効果は示されていません。(なお、PPIやVonoprazanを除菌の補助として用いている状況で、さらに、消化性潰瘍や併存するGERDに対してさらにPPI等を併用することは、PPIの総用量が薬機法で定められた用量を超えしまうため不可能です。)